今回の酒蔵紹介は寺田本家「五人娘」です。

前回ご紹介した鍋店と同じ神崎町にある寺田本家。このふたつの蔵は、ご近所でともに17世紀、江戸時代の創業ですが、その個性は全く異なります。
寺田本家の酒造りは、「発酵道」を標榜し、自社田や蔵の周辺の契約農家で作られる無農薬米を原料に使い、蔵付きの麹菌や酵母菌にこだわる自然酒。仕込み唄が歌われ、多くの蔵人がかかわる手作りの酒造りの様子からは、祭礼を想起させられます。
香り高い酵母や作り手の個性を感じさせる酸味など、全国の酒蔵がしのぎを削る最先端の酒造りとは一線を画し、蔵人と麹や乳酸菌、酵母が寄り添い自然の働きにゆだねる酒造り。
筆者の独断ですが、このお酒は「微生物たちのにぎやかな営み」や、「内的な宇宙」の存在を感じる唯一無二のお酒ではないかと思っています。
「五人娘」をはじめとした寺田本家のお酒は、オーガニック、自然食品、マクロビといった分野で特に熱い支持を受けています。

「五人娘」の名付け親は、アララギ派の歌人土屋文明さん。蔵を代表するお酒です。
「香取」は、米をあまり磨かない低精白で、醸造の過程で生じる雑味も楽しもうというお酒。「香取」には精米歩合80%と90%があり、売り切れ必至の人気のお酒です。

五人娘を味わう店「蔵精」

房総半島の中央にある城下町、大多喜。この大多喜にある「蔵精」は、発酵と野菜料理にこだわった和食のお店。

四季折々の旬の野菜のコース料理は身体に優しく、いつお邪魔しても癒されます。

3月のある日にいただいたコースをご紹介します。使われている酒粕は主に寺田本家のものと伺いました。酒粕だけでなく自家製醤油のもろみなど、コースのあちこちに賑やかな発酵を感じます。

①人参の和ムース
②春子(椎茸)のふき味噌焼き、発酵旨うまオイル掛け 春子とケール
③春トマトと新若布
④天ぷら(大多喜名産の筍など)
⑤干しなすおろし和え
⑥釜揚げひじきともろみの炊き込み玄米ごはん
⑦カスタードグラタン よもぎと干し苺

「蔵精」のご主人にお話しを伺ったところ、「寺田本家の酒粕はとにかく使いやすい。普通、酒粕は果物には合わせづらいがデザートにも使えるので、2月にたくさん仕入れて、いろいろなメニューに使う」とお話しいただきました。
ちなみにご主人は、以前は「五人娘」をよく飲んでいたが、3年ほど前から「香取」を愛飲しているとのこと。
お店では「五人娘」と「香取」が提供されペアリングを楽しめます。(売り切れの場合あり)
②と⑤は、大多喜町で「大田喜(おだき)焼」として器を創作していた木村武清さんの陶器です。
①と⑦は大多喜の明賀考和さんの作とのこと。器も料理の楽しみのうちですね。

「蔵精」でテイクアウトした酒粕パテと千葉県産の野菜のソテー

すべて県内産野菜です。ミニトマトには蔵精の黒にんにく豆乳クリームチーズ漬けと酒粕ラー油を乗せました。
(器は木村武清さんの作。)

お酒は「五人娘」と「香取」でいただきました。お酒と酒粕のペアリングがこれほどの相乗効果を生み出すとは。身体の中から満たされます。

千葉の地酒を買う 「リカープラザ大越酒店」(千葉市)

JR稲毛駅前のビルの1階にある大人のたたずまいの酒屋です。こちらは寺田本家の特約店でもあり、日本酒だけでなくワインやクラフトビールなど世界各国のお酒が揃います。

お酒だけでなく1000種類以上のタバコや葉巻が並び、粋な大人の世界を感じます。

日本酒のラインナップは、作り手のこだわりをお客さんにしっかりと伝えたいと、手作りの小さな蔵の個性派が並びます。

ワインも世界各地を歩いて直接吟味したものを揃えていると伺いました。

お邪魔した日は、冷蔵庫は寺田本家や、以前この稿でも紹介した福祝や鳴海も並んでいました。

寺田本家のお酒を扱い始めたのは30年も前。自然酒という考え方に共感して長いお付き合いを続けているそうです。

お店の地下には「izakaya銘酒の里」があり、お酒と肴が楽しめます。

今年で創業80年と伺いました。地元、稲毛の人々に愛されるのも納得。お酒に対する愛情とぬくもりを感じるお店です。

■株式会社 寺田本家
 〒289-0221 千葉県香取郡神崎町神崎本宿1964番地
 TEL:0478-72-2221 
 https://www.teradahonke.co.jp/

■蔵精
 〒298-0213 千葉県夷隅郡大多喜町桜台32番地
 TEL:0470-82-4949
 http://kurashow.com/

■リカープラザ大越酒店
 〒263-0031 千葉県千葉市稲毛区稲毛東3-16-2
 TEL:043-247-3347
 https://www.liquor-plaza.com/